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    小野尚美

英語の学習方法

英語はどうしたら上達するのか?よく聞かれる質問です。
巷には英語上達法に関する本が数えきれないほど売られていて、そこには確かに共通点もありますが、どれが最良の方法なのか迷います。
基本的な考え方は以下の通りです。

英語の音と
リズムに慣れる

英語と日本語の音声体系は違う

英語上達のための第一歩は、英語の音声をよく聞いて、英語の音とリズムに慣れることです。

私たちは生まれてから10カ月頃までに、それまで聞いたことばが日本語であれば、日本語の音声体系が身に付いていくといわれています。そのことばが英語であれば、英語の音声体系が身に付きます。例えば、犬の鳴き声を聞くと、日本語の音声体系が身に付いた人は、「ワンワン」と鳴いていると聞こえ、英語の音声体系が身に付いた人は、「Bow wow」と聞こえるといいます。犬が鳴き方を変えているのではなく、明らかに一つの鳴き声が、自分の慣れ親しんだ音声体系を通して聞こえてくるのです。

小学校または中学校から英語を習い始めた場合、日本語の音声体系が既にしみ込んでいます。それまで日本語だけで日常生活を過ごしてきた人が新たに英語の音声体系を取り込むわけですから、その新しい音声体系に慣れるまで時間と努力が必要です。

英語の音と意味の理解から文字(綴り)の理解へ

小学校中学年から始まる外国語活動では、英語を聞いて、英語で発信することから始めます。日本語と英語の音素、リズム、イントネーションの違いに慣れる必要があるからです。高学年になると英語の読み書き活動が始まります。

学習者は、それまでの英語で聞き話す活動を通して、英語の文字に触れる経験(英語で書かれた単語を一つ一つ正確に読むのではなく、単語を見る経験)を十分しているので、単語の音声と意味の理解を繰り返し行うことで、それらが文字(綴り)と一致するようになり、単語の音声、意味、綴りの理解ができるようになります。

コミュニケーションを
楽しみながら
英語を身に付ける

英語でコミュニケーションする豊富な機会

英語を習い始めたら、なるべく英語を使う機会を持たないと、せっかく英語を小学校から勉強してもなかなか上達しません。

日本の英語学習者の英語を使う機会を増やす方法として、絵本を活用したストーリーテリング活動があります。この活動は、日本にいながら英語を使う機会を学習者に与えることができ、学習者が既に持っている知識を活用して、英語能力を向上させます。このLearning by Storytelling指導法(LBS指導法)の詳細については、LBS研究会のホームページがあるので、そちらをご覧ください。

英語学習には時間と努力が必要ですが、この絵本を使ったストーリーテリング活動によって、学習者は英語によるコミュニケーションを楽しみながら、英語を身に付けることができます。

英語で発信する
機会を求めていく

英語で聞いて、読んで、話して、書いて

大人になってからさらに英語能力を伸ばしたい人は、毎日必ず一定の時間を英語学習のために確保し、それを続ける必要があります。

映画好きであれば、映画を見て、登場人物のジェスチャーにも注目しながらそれぞれの場面の中の英語表現を学びます。ジャンルは、ディズニー映画、SF映画、テレビドラマ、漫画でもいいでしょう。とにかく好きなジャンルの物を選びます。これらは画像があるので、音声、意味、(字幕があれば)綴りに同時に触れることができ、英語の理解を助けます。音楽が好きであれば、英語で音楽を聴いて、リズムとともに意味を理解し、歌うなどして楽しみましょう。英語の歌の歌詞を日本語に翻訳して理解していくのもおもしろいです。

聞くだけでなく、英語で読む活動も行います。好きな小説、エッセイ、英字新聞を読むのもいいでしょう。例えば、ダイエットに興味があればその分野についての情報集めを兼ねて英語の記事を読んでみるのもいいでしょう。自分の好きなジャンルを選び、1日一定時間を英語で読む活動に割り当てます。

英語で書かれた絵本を読むのもお薦めです。絵本はイラストもあるので、理解がしやすいということがあります。絵本は、本来子供が読むと思っている人が多いでしょうけれども、思いのほか難しい単語が出てくることがあり、大人にも考えさせるテーマのある絵本もあります。ある程度辞書を引かなくても読めるレベルで、内容が面白いと思える英語で書かれたテキストを毎日ある一定時間読むことです。

また、英語を聞いて読む活動を通して得た情報を使って、英語で発信する機会を求めていくことが肝要です。英語で話すコミュニティーに参加して、人とのつながりを持ちながら英語で交流してみましょう。毎日英語で日記を書く、一人でいる時に何分間か、自分が考えていることを英語で言ってみるといった活動は一人で毎日できます。

4つのどのスキルに関しても、学習者自身が好ましいと思える英語活動を日常生活の中に取り入れることが大切です。

英語学習の際にはどのスキルについても、1)正確に英語を理解し発信していく練習と2)流暢に英語を理解し発信していく練習の両方を同時に行うことが大切です。例えば、英字新聞のあるコラムを正確に読む時間を取る一方で、辞書なしで好きな小説を読んで楽しむ時間を取るということです。1)の正確な英語知識の積み重ねると2)の英語を流暢に運用していく能力の向上が加速していきます。

英語の学習には正確さに重きを置いた学習と流暢さに重きを置いた学習の両方が必要なのです。

目的をもって楽しむことで継続できる活動

語学だけでなく、どんな勉強も楽しみながらやりましょう。海外旅行をする、外国人の友達に日本を紹介するといった目的があると、さらに継続して英語によるコミュニケーション能力を伸ばしていけます。

また、短期留学や長期留学をしたときに、語学学校や大学で英語以外の外国語のクラスを履修してみてください。英語を媒介として、英語を主要言語とする学生と一緒にフランス語などの英語以外の外国語を学ぶと、日本語で学ぶ場合よりも簡単にできるように感じます。英語とフランス語が言語として似ていることもありますが、英語を介して学んでいくことで、フランス語だけでなく、英語能力の向上も期待できます。